大量の自社データがなくても、一次情報は作れます。材料は、顧客接点・業務経験・検証・自分の観察の4つにあり、公開するときに対象・期間・方法・結果・解釈・限界の6項目をそろえれば、第三者が確かめられる情報になります。

たとえば、顧客10社へのインタビューを、対象・期間・方法を添えてまとめて公開すれば、それは自社にしかない一次情報です。

一次情報の材料は、大量のデータではなく、日々の業務の中にあります。

「一次情報なんて、うちの会社にはない」と感じている会社でも、顧客との会話や問い合わせの内容、施策を試した結果は、たいていの会社にあります。足りないのは、それを整理して、第三者が確認できる形にすることだと見ています。

GEO対策そのものの全体像は、GEO対策とはで解説しています。

この記事で扱う範囲一次情報の4つの材料/公開時に整理する6項目/検索上位とAI引用の重なり(15業界450問)/一次情報とAI引用の因果はこの調査からは言えない

関連動画:一次情報とは?GEO対策で必要な理由と作り方を解説【AI検索対策】

GEO対策で一次情報が必要な理由

生成AIやAI検索は、Web上の情報を学習したり、回答を作るときに参照したりします。そのとき意味を持つのは、情報の量ではなく価値です。

ありふれた情報には価値がなく、根拠を伴った情報には価値があります。

一般的な解説をまとめた記事は、Web上にいくつもあります。他サイトの記事をまとめただけでは、同じ情報を競合サイトも作れます。誰でも作れるありふれた情報は、どのサイトから取っても同じなので、そのサイトならではの価値がありません。

一方、自社が条件を決めて取得した観測結果であれば、他のサイトには存在しない判断材料を提示できます。さらに、誰を・いつ・何件・どの条件で調べたのかが分かれば、読者や第三者がその情報の取得条件と根拠を確認できます。「A社は人気があります」「この業界は成長しています」といった説明だけでは、読者は他社や過去との違いを判断できません。

根拠を伴った一次情報には、ほかでは代わりがきかない価値があります。この価値から、次の3つが言えます。

1. AIの学習・参照のソースになり得る

価値のある情報は、AIが学習する情報や、回答を作るときに参照する情報源の候補になります。ありふれた情報は同じ内容のページがいくつもありますが、自社にしかない情報は、そのページが発信元になります。

これは「その情報を使うなら必ず原典が引用される」という意味ではありません。メディアや比較サイトなどが調査結果を紹介し、二次情報として利用されることもあります。それでも、自社自身が新しい事実や観測結果の発信元になることには意味があります。

2. 数字や事実が伴えば、ハルシネーション(誤回答)の対策になる

AIは、事実と異なる内容を、もっともらしく生成してしまうことがあります。これをハルシネーションと呼びます。

料金、仕様、実績、調査結果など、自社について正確な数字や事実を、条件とともに公開しておけば、AIが自社について説明するときの正しい材料がWeb上にある状態を作れます。誤回答を完全に防げるわけではありませんが、誤った説明が生まれる余地を減らす対策になります。詳しくはハルシネーションとはで解説しています。

3. 発信し続けることで、E-E-A-Tの裏付けが積み重なる

根拠を伴った一次情報を継続して発信すると、その会社がその分野で実際に経験を積み、専門的な知見を持っていることの裏付けが積み重なります。これは、Googleがコンテンツ品質の評価軸として示すE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の考え方と一致します。

Googleも、役立つコンテンツを自己評価する観点として、独自の情報・調査・分析を提供しているかに加え、誰がコンテンツを作ったのかを明確にすることを挙げています。

参考:Google Search Central「Creating helpful, reliable, people-first content」

一本の記事で終わらせず、発信を続けることで、SEOとGEOの両方の土台になると考えています。

ただし、ここで挙げた3つは、「一次情報を作ればAIに必ず引用される」という意味ではありません。この点は、後半の「一次情報を作れば、『必ずAIに引用される』わけではない」で整理します。

GEO対策で使う一次情報とは|一次情報・ファーストパーティデータ・オリジナルリサーチ・二次情報

GEO対策やコンテンツ制作では、一次情報・ファーストパーティデータ・オリジナルリサーチ・二次情報が混同されることがあります。それぞれの違いを整理します。

ファーストパーティデータと一次情報の違い

項目 ファーストパーティデータ 一次情報
意味 自社が顧客やユーザーから直接取得したデータ 情報の直接的な出所
例 購買履歴、利用ログ、問い合わせデータ 実験結果、顧客インタビュー、現場観察、公式発表
特徴 データそのものを指す 情報がどこから生まれたかを指す

ファーストパーティデータは、一次情報を作るための材料のひとつです。一次情報は、必ずしも大量のデータである必要はありません。顧客へのインタビュー、専門家の実務経験、自社で行った検証結果、現場で確認した事実なども、直接取得した情報であれば一次情報になります。

オリジナルリサーチ(独自調査)は、調査や分析で新しい知見を作る活動です。一次情報は、情報がどこから生まれたかを指す言葉で、オリジナルリサーチの材料にもなります。

二次情報は、一次情報などを第三者が要約・分析・解釈・解説した情報です。たとえば、自社で実施したアンケートの結果は自社の一次情報ですが、その結果を第三者メディアが紹介・分析した記事は二次情報にあたります。

二次情報にも価値はあります。そのうえで、GEO対策で「他では得にくい情報」として発信できるのは、自社が発信元になっている一次情報です。

言葉の定義は、一次情報とは、オリジナルリサーチとはで詳しく解説しています。

一次情報を作る方法(4つの材料)

「独自データがない」と感じている企業でも、日々の業務の中に一次情報の材料はあります。

  • 顧客から寄せられる問い合わせ
  • 営業担当者が聞いた課題や要望
  • カスタマーサポートの対応履歴
  • 商品やサービス改善の過程
  • 導入支援で得た知見
  • 現場担当者が蓄積している経験

これらは、その企業が直接経験した情報であり、他社が簡単に取得できるものではありません。

問題は「情報がないこと」ではなく、社内にある情報が整理されず、外部から参照できる形になっていないことです。

では、何を材料にするか。一次情報というと、「数千人規模のアンケート調査」や「市場調査レポート」を想像するかもしれません。企業が作れる一次情報の材料は、大きく分けて4つあります。顧客接点、業務経験、検証・実験、そして自分自身の観察です。

1. 顧客接点から作る一次情報

日々の顧客対応には、他社にはない情報が蓄積されています。

  • 顧客が頻繁に抱える課題
  • 導入時につまずくポイント
  • 解約につながる要因
  • 実際に評価された機能
  • 改善要望の傾向

問い合わせ内容を分類・分析することで、その企業だけの傾向が見えてきます。

顧客接点から作った一次情報をまとめる形のひとつが、導入事例です。導入事例の構成は導入事例(ケーススタディ)とは|意味・一般的な構成・一次情報との関係で整理しています。

2. 業務経験から作る一次情報

専門企業では、担当者の経験そのものが情報資産になります。

  • 過去案件から見えた成功パターン
  • 支援した企業に共通する課題
  • 現場で発生した失敗例
  • 改善までのプロセス

単なる経験談ではなく、対象や条件を整理することで、再現性のある情報になります。

3. 検証・実験から作る一次情報

企業が実際に試した結果も、価値ある一次情報になります。

  • 新しい施策を実施した結果
  • ツール導入前後の変化
  • 複数手法の比較結果
  • 運用改善の検証

成功した結果だけでなく、「何を試して、なぜうまくいかなかったのか」も、他社にはない情報です。

4. 自分自身の観察から作る一次情報

一次情報は、企業規模の調査や分析からだけ生まれるものではありません。自分が継続して観察した内容も、整理のしかたによっては情報になります。たとえばAIを使っていて気づくことです。

  • 同じ質問でも、入力のしかたで回答が変わった
  • 同じテーマでも、質問文によって関連づけられる情報が変わった
  • 何回か確認すると、回答の傾向に違いがあった

気づいたことは、観察した事実・そこから考えたこと・この観察では分からないことを分けて書くと、確かめられる情報になります。書き分け方は、AI検索の検証結果のまとめ方で5つのステップにまとめています。

オリジナルリサーチは大規模アンケートだけではない

オリジナルリサーチ(独自調査)を決めるのは、規模より手順です。自社で情報を取得し、決めた方法で分析し、新しい知見として整理する。この3つがそろえば、小さな調査でも独自調査になります。

  • 顧客10社へのインタビュー分析
  • 過去1年間の問い合わせ分類
  • 支援案件の成功要因分析
  • 社内の専門家へのヒアリング

これらも、方法や対象を明確にすれば独自調査として価値を持ちます。

「50件なら十分」「300件なら価値がある」という一律の基準はありません。決めておくのは、どの範囲を対象にし、その結果からどの範囲まで結論を出すのかです。

たとえば10社だけを調査したのであれば、

「今回対象とした10社では、この傾向が確認された」

とは言えます。

その10社の結果だけを使って「この業界全体がこうである」と一般化するのは、適切ではありません。

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一次情報を公開するときに整理する6つのポイント

社内にある情報を、そのまま「経験談」として公開するだけでは、十分な根拠にならないことがあります。根拠となる情報として価値を持たせるには、次の要素を整理します。

根拠となる情報として公開するときに整理する6項目

項目 確認すること
対象 誰・何を分析したか
期間 いつ取得した情報か
方法 誰が(調査主体)、どのように集めたか
結果 何が分かったか
解釈 そこから何が言えるか
限界 どこまで当てはめられるか

「○○%が支持しました」という数字だけがあり、誰が調べたのか、対象者や調査期間、質問方法が分からなければ、その数字をどこまで一般化してよいか判断できません。

調査主体や方法を書くのは、読者や第三者が、その情報の取得条件と根拠を確認できるようにするためです。AIが調査主体を見て信頼するかどうかは、ここでは扱いません。

比べるときは条件を、数字には分母を示す

調査データは、一定の条件で複数の対象を比較できる形にしやすいという特徴があります。

  • 企業別
  • 商品別
  • 業界別
  • 年代別
  • 年度別
  • AI別
  • クエリ別

たとえば、

  • 同じ質問を複数のAIで実行した
  • 同じ条件で15業界を比較した
  • 同じ指標で前年と今年を比較した

といった調査であれば、違いを確認できます。

見るべきは、比較対象ごとに条件が変わっていないかです。

調査結果は、数字の大きさより、「何と何を、どの条件で比べたのか」が分かるかどうかで使い道が決まります。

業界調査では具体的な数字に目が行きますが、「62%だった」という数字だけでは、その意味を判断できません。

確認したいのは、次のような条件です。

  • 何を分母にした数字なのか
  • 調査対象は誰・何なのか
  • 対象件数はいくつか
  • いつ取得したのか
  • どの条件で計測したのか
  • どの単位で集計したのか

Genviewが実施した15業界450問の調査でも、同じデータを2つの起点から数えています。

一つは、AIが引用したURLを起点に、同じ質問のGoogle上位10位にもあった割合を見る数え方です。AIが引用したURL 8,006件のうち、25.0%がGoogle上位10位にありました。

もう一つは、Google上位10位に出たサイトを起点に、同じ質問でAIにも引用された割合を見る数え方です。Google上位10位に出た4,190件(質問×サイト)のうち、43.6%がAIにも引用されていました。

この2つは分母が異なるため、単純比較できません。また、どちらも同じ時期に観測した2つの集合の重なりを数えたもので、SEOの順位がAIの引用を生んだという因果を示すものではありません。

数字は、何を表しているのかを第三者が確認できて、はじめて使えます。

公開した数字や主張を、あとから第三者が確かめる考え方は、ファクトチェックとは|意味・英語表記・ClaimReviewとの関係で整理しています。

分かったことと、分からないことを分けて書く

良い調査は、分かったことと一緒に、この調査から何までは言えて、何は言えないのかを示します。

たとえば、

  • ChatGPTとGeminiだけを対象にした
  • 2026年8月時点の結果である
  • 対象は15業界450問である
  • 特定の条件で取得した回答だけを分析している
  • 観察された関連性であり、因果関係を証明したものではない

といった制約です。

このような情報があることで、読者は調査結果を過度に一般化せずに利用できます。

「今回の450問ではこうだった」を、「生成AIでは必ずこうなる」と読み替えない。制約を書いておくのは、そのためです。

一次情報を作れば、「必ずAIに引用される」わけではない

一次情報を公開すると、自社がその情報の発信元になります。ただ、AIに引用されるかどうかは、公開したあとで別に確かめる必要があります。

上の「比べるときは条件を、数字には分母を示す」で紹介した15業界450問の調査でも、Google検索の上位10位に出たサイトの半分以上は、同じ質問でAIに引用されていませんでした。一次情報そのものを数えた調査ではありませんが、検索での評価とAIの引用は一致するとは限りません。

生成AIやAI検索の回答では、企業の公式サイトだけでなく、比較サイト、メディア、アフィリエイトサイトなど、さまざまな情報源が使われます。AIサービスがどの情報を取得・利用・表示するかは、サービス、質問内容、検索結果、情報の取得方法など複数の要素に左右されます。

そのうえで、検索の基本を整えておくことは、AI検索でも土台になります(GEO対策とはで整理しています)。

AIによる引用・参照は結果であり、企業が直接保証できるものではありません。用語の意味はAI引用とは?AIに引用される仕組みと、引用元になりやすい情報源を15業界の調査で解説にまとめています。

企業が取り組むべきことは、「AIに引用される文章を作ること」ではなく、AIやユーザーが信頼できる情報源を作ることだと考えています。

AI時代に企業が作るべき情報資産とは

記事の数を増やすより先に、自社にしかない情報を整理します。日々の業務経験が情報源になるまでの順番は、次のとおりです。

日々の業務経験が、AIが参照できる情報源になるまでの順番 日々の業務経験、一次情報、分析・整理、根拠となる情報として公開、検索エンジン・AIが取得、AI回答で参照される可能性、の順に進む。最後の一歩は企業が保証できない。 日々の業務経験 一次情報(直接取得した事実) 分析・整理(対象・期間・方法・限界) 根拠となる情報として公開 検索エンジン・AIが取得 AI回答で参照される可能性 ここは 保証できない
図2:日々の業務経験が、AIが参照できる情報源になるまでの順番

最後の一歩(AIが実際に引用するか)は、企業が直接決められない部分です。

大規模な調査ができる企業でなくても、顧客との接点、現場での経験、専門家の知見は持っています。自社にしか存在しない情報を見つけ、確認できる形で公開します。

公開したあとに確かめる3つの手順

一次情報は、公開したあとも確認を続けます。

GEOの観点では、自社が重視する質問で、その情報が実際にどのように扱われているかを確認します。

STEP1|確認したいクエリを決める

まず、自社がAI上で確認したい質問を決めます。

たとえば、

  • 「○○業界の市場規模は?」
  • 「○○を導入している企業の割合は?」
  • 「○○業界でよくある課題は?」
  • 「AとBではどちらが利用されている?」

などです。

公開した内容と、ユーザーが実際にAIへ尋ねる質問が一致しているかを確認します。

STEP2|AIの回答と引用元を確認する

次に、ChatGPTやGeminiなどで実際の回答を確認します。

見るのは、自社名が出たかどうかに加えて、次の点です。

  • 自社の一次情報が引用されているか
  • 他社の調査が引用されているか
  • 比較サイトやメディアが使われているか
  • 自社データが二次情報経由で使われていないか
  • 回答内容が自社の一次情報と一致しているか

STEP3|AI・クエリごとの差を見る

一つのAI、一つの質問だけでは判断しません。

上の「比べるときは条件を、数字には分母を示す」で紹介したGenviewの15業界450問の調査でも、検索上位のサイトがAIに引用される割合は、ChatGPTとGeminiで大きく違いました(出典:株式会社FID/Genview「Google検索の上位10位のサイトは、AIの回答でどれだけ登場(引用)されるのか?」2026年8月)。

そのため、優先して確かめたい質問について、複数のAIで続けて確かめます。

よくある質問

自社データがなくても一次情報は作れますか?

作れます。大規模な顧客データやアンケート調査がなくても、顧客インタビュー、問い合わせ内容、営業活動、現場での観察、検証結果など、自社が直接取得した情報が一次情報になります。

一次情報を作ればAIに引用されますか?

検索で上位にいるサイトでも、AIに引用されるとは限りません(Genviewが15業界450問で数えた結果)。一次情報を作っても引用は保証されないので、公開したあとはAIの回答で実際の扱われ方を確かめます。

オリジナルリサーチは大規模な調査が必要ですか?

顧客10社へのインタビューでも、オリジナルリサーチになります。問い合わせの分類、過去案件の整理、社内の専門家へのヒアリングなど、自社で取得した情報を分析し、新しい知見として整理していれば、規模は問いません。

調査データでは何を明記すべきですか?

少なくとも、対象・期間・方法(調査主体と取り方)・結果・解釈・限界の6項目を明記すると、第三者がその数字の意味を確認しやすくなります。「何が分かったか」だけでなく、「この調査だけでは何を言えないか」も書いておきます。

最初にやるのは、自社にしかない事実を1つ探すこと

自分たちが直接取得している情報の中から、他社にはない事実を1つ探してください。問い合わせの記録、営業のメモ、試した施策の結果などです。

見つけたら、対象・期間・方法・結果・解釈・限界の6項目で書き出してください。6項目が埋まらないところが、公開の前に足す情報です。

参考

この記事を書いた人

吉田 清登 / Yoshida Kiyoto

株式会社FID 執行役員CMO / Genview プロダクトマネージャー / JECCICA客員講師

通販業界20年以上。再春館製薬所で越境EC・タイチームの管理を経て、現在は Genview の事業責任者。

得意分野のCRMのエッセンスをGEO対策に取り入れたのが Genview です。AI時代の接客は BtoC with AI。主役はお客様で、AIはその間に入った存在です。お客様に伝えると同時に、AIにも自社を正しく伝える。AIを通してどう伝わっているかを、実際に測って確かめています。

Genview のご案内

公開した一次情報が、どの質問でどのAIに引用されたかを記録したい方は、Genviewをお使いください。

社内のどの情報を一次情報にできるかから一緒に考えたい方には、コンサルプラン(戦略策定・改善提案・運営代行)をご用意しています。

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